ゾイシアデクライン(日本芝立枯病)

病原体:ゴウマノマイセス菌、フィアロフォラ菌

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この病気は毎年同じ場所に発生する。元来コウライグリーンの病気であったが、近年フェアウェイ、ラフ、ティの重要病害となった。春先の春はげ症と区別がつきにくいが、春はげ症は早く回復するのに対し、ゾイシアデクラインは初夏になるまで回復しない。

【発生芝種】日本芝
【別名】しずみ症
ゾイシアデクライン(日本芝立枯病)

菌の主な生息部位

 

発生芝種・発生時期

ゾイシアデクライン(日本芝立枯病)

 

発生生態

この病気は毎年同じ芝(場所)に発生する。初期は下葉の枯れ上がりが激しいが上位の未展開葉(芯葉)までは枯死しないこと、パッチは不鮮明で見過ご されやすくそのうち芝は徐々に衰退(デクライン)してゆくこと、根部の維管束が侵されて貧弱になっているので散水を十分に行うと一時的に回復すること、芝 が旺盛に生長する夏期には自然回復に向かうことなどが特徴である。

本病の病原菌には2種類あり、有性世代が見つかっているゴウマノマイセス菌とまだ見つ かっていないフィアロフォラ菌がある。前者は発生頻度は低いが病原力が強く、発生頻度の多い後者は弱い。

元来コウライグリーンの病気であったが近年フェアウェイ、ラフ、ティの重要病害となった。春先の春はげ症との区別が付かなかったため見過ごしてきた と思われる。春はげ症は早く回復するが、ゾイシアデクラインは初夏になるまで回復しない。これは典型的な外着生根部感染病(ETRI病)であり、根部機能 が戻らないと地上部も戻らないためである。 本病に他の病原菌(オフィオスフェレラ、ピシウム、コレトトリカム、フザリウム、カーブラリア)が混合感染すると症状が激しくなり、裸地パッチにな る。

日本芝、特に細葉系のコウライシバに肥料不足と乾燥条件がそろうと症状が最も激しくなる。ノシバに人工接種すると約1ヶ月後に下葉の黄化~褐変枯死が 始まる。 感染芝の枯れた最外葉を1枚はがして取り除き、黄白色の地際部葉鞘をルーペで観察すると黒色のクモの巣状の菌糸が見られる。顕微鏡では褐色の菌糸と特異的な裂片状の菌足(付着器)が観察できる。

 

予防対策

発生してから気付くことが多いので予防策はとりにくい。一時的に症状を軽減、回復させるには施肥と散水を十分に行い、芝の生育を促すこと。酸性資材の施用も発生を抑える。

 

治療対策

DMI剤、MBC剤、多作用点阻害剤、QoI剤、SDHI剤の散布が有効であるが、病原菌が根部および地際部に感染しているので展着剤(浸透剤)を加え て、散布水量を多くしないと薬剤が届かない。また、処理しても根部や地下茎(ほふく根茎)までが回復するには相当の時間を必要とし、2~3年継続散布しな いと完全回復には至らない。

散布適期は秋期、症状が激しい場合には春期も実施する。すでに発生している場合が多いので薬剤散布と更新作業の両方が対策となる。

最近はチガヤシロオカイガラムシによる被害が増加し、外見上では本病との区別が付かなくなった。散布薬剤を間違える可能性がある。

 

Envuの推薦防除方法

主に秋の日本芝休眠期前の散布が有効です。根部に感染するため、散布水量を上げるなどの工夫が必要です。場合によっては複数年かけて状態を改善していくことが必要です。

 

参考写真

ゾイシアディクライン 12-1
ゾイシアデクラインに感染した日本芝の直立茎 a:左2本は健全、右1本が罹病茎で黒い枯死葉鞘で覆われている b:外側の枯死葉鞘を取り除くと黒色の外着生菌糸が見られる(右)、左は健全

 

ゾイシアディクライン 12-3
フィアロフォラ菌の菌足(付着器)からのコウライシバ表皮細胞への侵入 a~c:微小遠隔操作針による菌足の剥離順序 d:菌足の裏側と元の位置にあったところのシバ表皮には同じ相同構造(矢印)が見られ、侵入菌糸を示す

 

ゾイシアディクライン 12-6
ゴウマノマイセス菌の接種・発病. ノシバ幼苗に胞子を秋に接種し、翌年(梅雨期)に現れた生育抑制と激しい黒色根(左1本は無接種)

 

ゾイシアディクライン 12-7
フィアロフォラ菌の感染による枯死(左)と健全(右)コウライシバ. 感染芝は芽立ちが遅くなるか出てこない. 前年夏に生長した根部はあまり影響を受けていないようにみえる(5月)

 

ゾイシアディクライン 12-8
ゴウマノマイセス菌の有性時代 a:シャーレ内で人工的に造らせた数多くの子のう殻. 殻から長い首が伸びている b:子のう殻の拡大写真 首の先端から無数の子のうが露出している

 

ゾイシアディクライン 12-9
ゴウマノマイセス菌の子のうから出てきた感染力の強い子のう胞子 a:1個の子のう(写真中央)と多数の細長い子のう胞子 b:子のう胞子(矢印)が両端から発芽して先端に付着器を形成

 

ゾイシアディクライン 12-10
アプローチに発生したゾイシアデクライン. 踏み傷み、薬害、虫害のようにもみえる(4月)

 

ゾイシアディクライン 12-11
4月に発生したフェアウェイのゾイシアデクライン. 春はげ症との区別は付き難いがルーペによる菌の確認と症状の消失時期の差で可能である

 

ゾイシアディクライン 12-12
8月になっても均一なターフにならないのはゾイシアデクラインの感染による. 炭疽病やカイガラムシ被害と酷似しているので注意

 

ゾイシアディクライン 12-13
ゾイシアデクラインによる生育不良ヶ所の多いコウライティ(8月)

 

ゾイシアディクライン 12-14
薬剤によるゾイシアデクラインの防除効果 a:散布前(04年4月22日撮影) b:連続秋期DMI剤の散布2年後における回復(06年4月22日撮影)

 

ゾイシアディクライン 12-15
薬剤によるゾイシアデクラインの防除効果 a:前年秋期散布による翌年6月の結果(破線の左側:DMI剤散布、右側:無散布) b:前年秋薬剤散布による翌年6月の結果(ライン左側:無散布、右側:DMI剤散布)

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