サマーデクライン
病原体:非生物的病原
夏場の高温・多湿(気中、土中)、一時の乾燥、病原菌・線虫感染などの悪環境ストレスにより芝が黄化し、活力が衰え、葉ヤケや枯死にも至る生理的衰退減少をいう。発生するとパッティングクオリティーを著しく悪化させる。
菌の主な生息部位
発生芝種・発生時期
発生生態
夏場の高温・多湿(気中、土中)、一時の乾燥、病原菌・線虫感染などの悪環境ストレスにより芝が黄化し、活力が衰え、葉ヤケや枯死にも至る生理的衰退現象をいう。発生するとパッティングクオリティーを著しく悪化させる。気温よりも地温の影響が最大の発生要因である。地温が25℃以上に高くなると呼吸 上昇と光合成量低下によってフルクタンなどの蓄積炭水化物が減少し、根の生育・機能が著しく衰えてしまう。このようになると体内水分の低下、気孔の閉鎖、 蒸散作用の低下、体内温度の上昇の順に進行し、個体として衰退・枯死する。 根が生長する春や秋に土壌中のピシウム菌が根の表面に感染し、これによる根部機能障害がサマーデクラインの引き金のひとつになるともいわれている。 なお、ウエットウィルトは透水不良や集中豪雨などによる土壌の過湿状態時に真夏の過酷な気温が重なると土壌温度は逆に気中温度よりも高くなり、根部は急速に衰えて芝全体が枯死する症状をいう。これは高温・過湿障害でありサマーデクラインの一部といえよう。
予防対策
根の生育最盛期である4~6月の間にコアリングを行い肥培管理(特にりん、カリ)で地下深くまで根を十分発達させ、維持しておくこと。いわゆる"根上がり"は避けるべきである。また、この時期に藻類を発生させないように管理しておくことも重要な予防対策となる。
夏期の低刈り(4mm以下)は光合成の低下、呼吸の増加、根部への炭水化物の供給低下につながる。グリーン地下に埋設管をいれ、冷却水を通して地温 を下げ、夏バテを防止する研究がされている。可能なところではミスト散水(霧状噴霧)で気温上昇を抑えたり、2グリーンの場合は高温の時間帯には遮光シー トをかけるのも効果的である。夜間の扇風機利用も地温を下げる効果がある。
グリーンに使用される除草剤、殺菌剤、植調剤による影響も考慮する必要がある。逆に、薬剤でサマーデクラインを予防しようとする研究が行われ、スト レスガード製剤技術を取り入れた製品が出てきた。硝酸態窒素やカリは根部発達に、リンは発芽・分けつ促進や水ストレス耐性の増加に役立つとされているので肥料とこれらの薬剤との混用処理も試験されている。
治療対策
梅雨までの芝の張り替え以外は発生してからの対策はほとんどないといってよい。対策の遅れが最大の原因で少なくとも風通し、排水対策、病害予防を事前に実施しておくことが最重要である。
Envuの推薦防除方法
耕種的手法の徹底および各種薬剤を発生前に定期的に予防散布します。
参考写真
サマーデクラインによって黄化してきたベントグリーン(8月初旬)
炭疽病も併発しているサマーデクライン. a:春のエアレーション部分の芝には発生していない b:障害を受けたベントグラスの根が横方向への異常な伸び方をしている(ベントグリーン 8月下旬)
サマーデクラインによる葉ヤケ症状. 手前はブラウンパッチ(ベントグリーン 8月下旬)
事前の薬剤処理によるサマーデクラインの予防. ラインの左側:薬剤処理区、右側:無処理区(ベントグリーン 8月 下旬)
ストレスガード製剤の予防散布体系による効果(ベントナーセリ 9月上旬) a:無散布区炭疸、ピシウム、ブラウンパッチ、葉ヤケが発生 b:処理区いずれも発生無し